2025年 新年号
明けましておめでとうございます。
関与先の皆様方には、すがすがしい新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。
この一年、何卒よろしくお願い申し上げます。
さて、2025年という新しい年が明けましたが、今年の干支は「乙未(きのとみ)」の年にあたり、この乙未は「努力を重ね、物事を安定させていく」といった縁起のよさを表しているそうであります。何事においても前向きな姿勢を持って努力し、良い年にしていきましょう。
ここで特に、昨年度の政治情勢を振り返ってみますと、我が国においては去る10月に実施された衆議院総選挙において、自民党を中心とする与党勢力が惨敗に終わり、過半数を割りこむ結果となりました。今後の国会運営が大変心配になってきます。
さらに、世界の政治情勢においても昨年11月に実施されました米国の大統領選挙において、トランプ前大統領が返り咲くことになり、その大統領職と上下両院の多数派を共和党が占める「トリプルレッド」も実現し、今後同氏が正式に大統領に就任後は、思いのままに政権を運営することが可能となりました。これからの世界の政治・経済状況を考えますと、大変危惧をしています。
このような状況の中で、私ども人間社会は一体どのような方向に突き進んでいくのでしょうか。全く予測がつきかねます。いつも申し上げていることでありますが、何事においても人間同士が、幸福な社会を実現するために、その良識と相互扶助の精神でもってただひたすらに努力していくことが最も肝要ではないかと考えています。
ところで、前回の所長だよりは一倉定先生の「社長の姿勢」を題材にしての2回目のお話しとして「経営計画」を取り上げさせてさせていただきましたが、今回は社長の「お客様訪問」についてお話しをさせていただきます。
事業というものは、お客様の要求(ニーズ)を満たすことによって成り立ちます。そして、お客様の要求を満たそうとしているのは、わが社だけではありません。我社の同業ライバルがあります。お客様の要求を知って、これに応えるため、そして同業ライバルとの競り合いに勝つためには、社長がお客様のところへ行って、お客様の要求を正しく捉えることが絶対条件であることを肝に銘じることであります。さらに、お客様のところへ行けば、同業ライバルの動きも同時にわかります。
一倉先生は、社長が一週間の内、延べ一日以上会社の中にいるのは明らかな怠慢であると常に主張されておられます。そして、会社の中にいる時間以外は、お客様のところへ出かけてこそ社長の責任が果たせるともいっておられます。
そもそも、社長が会社の中にいてどのような仕事があるのでしょうか。一般的に、会社の中の仕事のほとんど大部分は単なる日常の繰り返し業務にしか過ぎないものであります。
具体的に、見ていきましょう。一倉先生の言によりますと、第一には、社長にかかってくる電話の応対であります。第二に来客の相手です。これらのどちらの用件も、日常の仕事に関することが大部分であり、会社の将来の方向づけに役立つ情報など、あまりありません。しかるに、これにとられる時間は馬鹿になりません。第三には社内でのいつまでも結論の出ない会議(小田原会議)であり、第四には管理者からのとりとめのない相談であります。どちらも社長がお客様の要求を知らず、外部情報にうといために間違った決定をすることが非常に多く見受けられます。第五には、書類に対するハンコ捺しであります。それは、社長が見なくともよいような書類が大部分でありながら、本当に社長が見なければならない書類はごく僅かしかありません。
というのは、社長が本当に必要とする情報は外部の情報であります。しかし、社長が見る情報のほとんど全部は、社内の情報だからであります。このように考えてくると、会社の中でやっていることは本当の意味での社長の仕事―事業の経営者―ではないのであります。
社長の本当の仕事とは、社長が外に出て、お客様の要求とその変化をとらえ、同業ライバルの動きを探り、世の中の流れの方向を見極め、これらに対応することこそ肝要であります。
社長のお客様訪問で特に気を付けなければならないのは社員と同行、あるいは道案内をさせるのはよいが、相手と会う時は、こちらは必ず社長だけにしなければなりません。社員を同席させると、相手は本当のことをいいません。特に、わが社に対する批判は絶対にしてくれません。それは同席する社員を批判することになるからであります。
それでは、今まで一度もお客様訪問をしたことのない社長の場合を考えてみましょう。ただ一回の訪問で、収穫を期待することは無理であります。初めての訪問では、相手がビックリしてしまうからであります。長年の取引でありながら、一度も顔を見せたことのない社長の突然の訪問です。相手にしてみれば、その訪問の真意が分かりません。「これは、うかつなことはいえないぞ」とまず鎧を着て、こちらの腹を探りにかかるのであります。本当のことなど、話し合いはできません。お互いがほぐれるには、回を重ねることであります。そして、こちらに他意がないとわかると、初めて心を開いて本当のことを教えてくれます。やはり、お客様とのスキンシップが何よりも大切であります。訪問は回を重ねるほど良いことになります。そして、正しい訪問は定期的、計画的訪問であります。
私どもが、お手伝いをさせていただいている会社の中で、社長が定期的に得意先回りをされている関与先においては、共通して毎期増収増益の成績を上げてある傾向が強く見受けられます。
「社長の皆様方、積極的に得意先回りをいたしましょう。」以上、この言葉を強調しまして、今回はこれで筆をおかせていただきます。